過食の夜明け前、嗜好品と森鴎外、ありのままの君が好き『ブリジット・ジョーンズの日記』

ああ、苦しい。相変わらず食欲が止まない。

特に夜が辛い。何かを食べる、食べてすぐ寝るのは罪悪感があるから暫く起きている、起きてると何か口に入れたくなる、という最悪な無限ループになる。

 

元々食べる方だし、過去には過食嘔吐の気もあったけれど、ここまでの過食は人生初だと思う。本当に怖い。なんだか食べることで自分を殺そうとしているようにも思える。特に、普段はそんなに口にしないスナック菓子を今回はもう散々貪り食っている。美味しいです。それに、止まらない。

それで思った。

体に良くないのは明白なのに、中毒性のあるこういう商品を作り続けるっていうのは一体どういうことなんだ?うん、ほとんど逆恨みですよ。

「嗜好品」をWikiを引いてみると、

嗜好品という用語は1912年(大正元年)の雑誌「太陽」に掲載された森鴎外の短編小説「藤棚」の記述によるという。

 

『藥は勿論の事、人生に必要な嗜好品に毒になるような物は幾らもある。世間の恐怖はどうかするとその毒になることのある物を、根本から無くしてしまおうとして、必要な物までを遠ざけやうとする。要求が過大になる。出來ない相談になる』

— 森鴎外「藤棚」、『太陽』第18巻第9号、1912年

つまり「体に毒」でも、そこはある程度残しておかないと、人は欲求を満たすためにどエライことをしてしまう、ということらしい。なるほど。

今回の私の過食の理由は多分2つある。ひとつはホルモンバランス。次にストレス。実は去年の夏からこちら、常にダイエットを意識していたようなところがあって、私にしてはかなりストイックな生活を送っていた。断っておくと、太っていたわけじゃない。ただ、体重の割に下半身だけがどうも太かった。そして私の元彼のイヌは足フェチだったので、お気に召してもらえるよう必死になっていたわけだ。ははは。はー、悲しい。

筋トレと有酸素運動をかなりしっかりとし、食事量は少なく、小麦系のものや乳製品、ジャンクフードを徹底的に避けた。それが知らず知らずのうちに結構なストレスになっていたみたいだ(それだけ頑張ったにも関わらず、彼とは結構ひどい形で別れてしまったし)。まさに「毒になることのある物を、根本から無くしてしまおうとして、必要な物までを遠ざけやうとする。要求が過大になる。出来ない相談になる」。うーん、さすが森鴎外

 

太って痩せて、なんてことを考えていたら、レネー・ゼルウィガーを思い出した。役のために10kg程体重を増やして、撮影が終わるとさっさと元の体重に戻してしまったというすごい女優だ。

彼女の代表作『ブリジット・ジョーンズの日記』を見返した。

ブリジットに恋心を寄せるマーク・ダーシーが言う。

「I like you just as you are」(ありのままの君が好きだ)と。

今日ほどこの台詞が腑に落ちたこともなかったと思う。そう、そうなのだ。結果的に過食に突っ走ってしまうほどのダイエットをしないと叶わない相手なら、そもそも2人の関係はボタンの掛け違いみたいなものだったのだ。